5Gについて
5Gとは第五世代の携帯電話通信網のことです。帯域幅を増加し高速化をもたらすことで、高解像度ビデオ、超低遅延配信ゲーミングから先進遠隔医療まで、あらゆるものを可能にします。その技術が成熟し世界中に普及するに伴い、更なる高度なアプリケーションを確実に可能にしていくでしょう。
2024年までに世界人口の40%が5Gを入手できるようになると予想されています。また、2035年までに5Gは13兆1000億ドルの売上につながるものと予想されています。5Gの世界資本支出(グローバルCapEx)と研究開発(R&D)は前年比で10.8%増加しており、今後15年間には毎年2650億ドルまでその額は上ると予想されています。
5Gを巡る競争はゴールドラッシュの様相を呈しており、電気通信事業者は可用性とセキュリティを優先しながら全力でトップを狙って疾走しています。これは当然のことといえます。一方で、避けることができないエネルギー消費の増加という課題が次第に明確になってきています。
「5Gは電気通信業界がかつて直面したことがない、最も大きな影響をもたらす、そして最も困難なネットワークアップグレードといえる。」
5Gアーキテクチャは既存のネットワークを土台としていますが、新たなITシステムを追加導入し、コアからエッジにわたり速くパワフルなコンピューティングを可能にしています。5Gが約束するのは、各サイトとマイクロサイトでデータを処理しコンピューティングを行う機能により、エンドユーザーに超低遅延のアプリケーションを提供することです。
このようにしてITへの依存が高まることで新たな課題が現れ、ネットワーク全体に及ぶ根本的な変更が必要となります。IT機器はこれまでの電気通信事象者の施設にそのまま設置できるものではありません。中央局をネットワークのコアにあるデータセンターに移行させることに最近の10年間を費やしてきた電気通信事業者がこのことを理解しないはずがありません。5Gのインフラは従来からの電気通信のインフラとITインフラの両方のモデルが混在するものになり、すべてのシステムの間でのシームレスな移行が常時必要となるでしょう。
5Gアーキテクチャを理解する
第5世代ネットワークは帯域幅拡大とレイテンシ短縮の2つの約束を叶えるため、既存の3G、4Gネットワークよりはるかに高密度になります。つまり、ネットワーク全体にはるかに多くの基地局が必要となります。そして、各局により多くのIT機器が搭載されます。重要な違いが存在しています。電気通信事業者は既存のネットワークに追加しているのではなく、3G、4Gのアーキテクチャの上にまったく新しいネットワークを構築しています。
この違いは、さまざまな形で現れます。ネットワーク全体にIT機器を追加するためには、繊細な電子機器を保護する環境面での注意がさらに必要になります。よって、キャビネットやエンクロージャーを強化し、専用の冷却と湿度管理が必要となります。従来の電気通信ネットワーク(3G、4Gへの対応も含む)では、極端な気候の場合を除き、通常精密冷却はまったく不要でした。アクセススペースに最低限のIT機器が必要だったくらいです。5Gでは、そうはいきません。
ネットワーク上にITシステムを幅広く導入することは、さらなる複雑な問題をもたらします。IT機器が稼働するには電力が多く必要です。そのため、大抵のIT機器はAC電力で動作しますが、既存の電気通信網と機材はDC電力によって動作しています。加えて、世界のさまざまな地点でネットワークの電力を補給するための代替エネルギー源が使用されていますが、これらもDC電力を供給しています。この電源の分断(ACとDCの)を乗り越えることはできますが、それには適切なパートナーが必要です。VertivはITと電気通信の両方の領域において、深くユニークな専門ノウハウをもっており、不慣れな電源アーキテクチャに対応する電気通信事業者を支援できます。
ここ数年間、中央局においてこのようなITの追加とAC電力の導入が見られるようになり、今も続いています。アクセス領域はセルタワー施設を伴った5Gの新しい開拓分野であり、5Gとその新しいITリソースに対応するため、相当な変更とアップグレードが行われています。これらの局ではRAN、D-RAN、C-RANなどの複数のアーキテクチャを繰り返し採用してきましたが、最終的にはクラウドRANに落ち着く模様です。クラウドRANとは、簡単に言えば仮想化されたセルラー網であり、さまざまな設備や地区にシームレスに負荷を移すことができます。
アーキテクチャはネットワークの需要に応えるために進化し、帯域幅とレイテンシの要求に応えるため、地上の機器がタワーに移動し、また、タワーのベースの機器が集中ハブに移動しました。
無線アクセスネットワーク(RAN)アーキテクチャを備えた初期のマクロ基地局は、セルタワー、アンテナと、局のタワーのベース部分に設置された関連機器で構成され、同軸ケーブルでアンテナに接続していました。このタイプの局には複数のエンクロージャーが必要でした。または、場合により、必要なすべての機器を収納する大きなシェルターハウジングを用いました。
分散型無線アクセスネットワーク(D-RAN)によりリモートラジオヘッド(RRH)がタワーのベースからタワー上部のアンテナのそばへと移り、同軸ケーブルは光ファイバーに変わりました。その他の機器は、ベースに残されました。D-RANにより必要な電力は少なくなり、アンテナと送受信機の距離が縮まって(信号の損失が少なくなり)ネットワークの容量は増加しました。タワーでRRHを使用することで、タワーのベースの機器の占有面積はより小さくなりました。
最近の集中型無線アクセスネットワーク(C-RAN)への移行の動きは、さらに破壊的なものになっています。C-RANアーキテクチャは4G対応のために台頭してきました。これにより、タワーのベースにあった機器は別の場所に集約され、複数の施設が共用するようになりました。これによりタワーにおける占有面積を縮小し、また、機器のモニタリング、保守、点検の面でもメリットがありました。現在の4G設備の多くがC-RANアーキテクチャを使用していますが、5Gへの移行により基地局設計の再評価が必要となります。
繰り返しますが、5Gが約束する機能は、電気通信事業者がすでにアクセスできる地所(つまり、基地局のタワー施設)を手始めとして、消費者にできるだけ限り近いところにコンピューティングを配備する能力にかかっています。C-RANにより、そのような設備からコンピューティング機器が撤去されていました。即時にこの状況が回帰するとは考えられません。集約されたC-RAN施設には、5Gで果たすべき役割があります。しかし、これからは、これらのタワー施設にIT機器が戻ってくるでしょう。そして、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)が導入され、かつてなかった展開の課題が新たに発生するでしょう。
コアにおける5Gの展開
今進んでいる、5Gのグローバルな展開キャンペーンは、既存の基地局に対するものだと思われがちです。しかし、実際の5Gは、中央局、新設の基地局とネットワークのエッジでのITにおいて展開されています。第5世代ネットワークは以前の世代より密度がはるかに高く、とても複雑です。そして、その展開のあらゆる側面に課題があります。
中央局では、5Gのトラフィックに必要となるサーバーに対応するために既存の設備を改造します。従来からの中央局は、すべてDC電源で動作する回線交換センターであり、熱負荷は2~3 kWで冷却に注意する必要はほとんどありません。5Gでは、このすべてが変化します。銅線や回線交換機は廃止され、ラックに格納されたサーバーに置き換えられます。DC電力システムやAC UPS装置が追加され、該当する熱負荷に対応した精密冷却ユニットが導入されます。
電気通信とITのアーキテクチャの間には、数十年来の根本的な違いが横たわっています。電気通信では、ネットワークを動作させるためにDC電力を用い、冷却の必要はあまりありません。データセンターやITの施設ではAC電源でサーバーを動作させており、サーバーの中にある電子部品は熱に弱く、適切な動作のためにより精度の高い冷却を必要とします。
5Gでは、この二つの境界はあいまいになっています。従来の電気通信環境にさらに多くのIT機器が導入され、これらの施設の電力と冷却のプロファイルは大きく変化しています。多くの場合、AC電力、DC電力のいずれかで済む簡単なものではなくなっています。これらの施設は、その両方が装備される方向に進化しています。その安全な設置と効果的な管理には特別な専門知識が求められます。Vertivは電気通信とデータセンターインフラのサポートの両方に数十年の経験をもっており、両方のアーキテクチャに詳しく、AC環境、DC環境のいずれのソリューションも提供しています。
少なくともこれまでの20年間、データセンター業界はこのような施設における電源アーキテクチャの選択肢として高圧DC電源の使用を模索してきました。その主張は単純です。電力変換を減らし、効率を高めることです。その実験の多くは理論的なものに留まりましたが、高圧DC電源のアーキテクチャを使用した単体のデータセンターや、いくつものパイロットプロジェクトが見られました。結局、DCに慣れていないことや、大部分のサーバーが引き続きAC電源を使用した現実により、幅広い普及には至りませんでした。
そのアプローチは、ITを多用する新しい5G中央局において、注目されているアプローチのうちの1つとなっています。すでにDC電源が装備されているこれらの施設は、DCを疑問視しない意思決定者が運営しています。データセンターに存在している現状へのこだわりは、電気通信分野にはありません。
その他の電気通信事業者は、中央局のDC経路を除き、概ね完全なデータセンター型のAC電力アーキテクチャに移行しています。このような場合、これらの施設は条件が完全に整えられ、古い中央局の大部分の機器を除去し、そのかわりに多くの場合では、完全に統合されたソリューション、例えばVertivのSmartRowやSmartRowのような組み立て済みのモジュラーソリューションに置き換えます。
最もよく見られるアプローチはAC環境とDC環境の混合で、一部の要素のためのDC電源システムを引き続き活用し、そこにサーバーのバックアップのためのACのUPS装置を追加するものです。すべてのケースに最近多く見られる1つの動向として、精密冷却(precision cooling)の導入があります。IT機器には冷却が必要ですが、冷却のために電源の負荷となる機器が増えます。ギガバイト単位の効率で5Gは4Gに勝るのにもかかわらず、5Gの全体的なエネルギー消費がとても多いのはこのためです。
SmartRowとSmartAisleは元々データセンター環境のためのものですが、AC/DCの混成環境に対応できるように構成することが可能です。ただし、多くの場合、安全性を確保するためにACとDCの電源装置は別々になっています。中央局では、通常SmartRowとSmartAisleは10~20のラックで展開し、エネルギー効率を高めるために機器の排熱を集める空間(ホットアイル)とそうでない空間(コールドアイル)が設けられています。
エッジにおける5Gの展開
従来のコア/アクセスモデルを補足するのは、最近注目されているネットワークのエッジです。これは、5Gを支えるために必要なものです。このようなエッジのリソースはエンドユーザーのすぐ近くにコンピューティングを配備します。これは、5Gが可能とする低遅延と広帯域を実現するために必要です。これらのリソースはタワー施設に展開できます。または、アクセススペースの他の部分に展開することもできます。
この数年間データセンターの前線でエッジの増殖が見られるようなっています。そして、今度は電気通信事業者が独自のエッジコンピューティングリソースを展開しています。場合によっては、5Gのニーズに対応するために、既存のエッジコンピューティング/クラウドプロバイダーを活用することもあります。
エッジデータセンターは5Gの機能を余すところなく提供するために不可欠な、繊細な設備です。Vertiv™ SmartMod™はこのニーズに応えるモジュラーソリューションです。典型例として、100 kWデータセンターに、1ラックあたり10 kWで、最大10のラックにより展開します。SmartModでは、IT機器と、電源システム・バッテリーを別室に格納し、すべてのシステムのための熱管理を装備しています。
5Gには過去の電気通信事業に必要だった知識を超える専門性が求められると思えるのは、実際にそのとおり、専門的な知識が必要だからです。第5世代ネットワークは電気通信とデータセンターのリソースが混在して成り立っており、AC機器とDC機器の両方が存在し、電気通信事業者の多くがみたこともないアーキテクチャを採用しています。5Gの展開を最適化するには、両方の分野のノウハウが欠かせません。
Vertivはデータセンター、電気通信機器、アーキテクチャのすべてに精通し、これらすべてについての豊富な経験をもっています。当社は他に類を見ないノウハウ、専門知識とシームレスに統合されたソリューションにより、5Gの周りに集約されるこれらの産業に対応し、電気通信事業者が不慣れな技術の習得に時間を割くことなく技術面の障壁を取り除きます。
アクセススペースへの5Gの展開
5Gはアクセスネットワークの変化を不可避なものにしています。それは中央局に見られた変化に劣らない劇的なものです。標準的な3G、4Gのタワー施設のベースステーションは、概ね5kWの負荷に対応しています。5Gになると、負荷は20~40 kWになります。このような消費電力とコンピューティングの膨大な増加には、既存の設備に相当な更新が必要となります。
設備の敷地の限界に対応することが第一に検討すべき課題であり、これが無線関連機器をタワー施設上部に上げる動機となっていました。そして、現在、タワーには数十の送受信機が取り付けられるようになっています。場合によっては、整流器までタワーに設置されて、AC電力をタワーに供給できるようにしています。ACケーブルはDCケーブルより安いので、コストを削減できます。
これらのすべのことが、タワーのベースにある電源システムからタワーの上部にある送信機までの電圧降下など、複雑で新たな問題を引き起こします。電圧降下は48Vを57Vに昇圧する電圧ブースター(昇圧装置)によって克服できます。これにより、タワーの機器に十分な電力を送ることができます。Vertivは創造的なソリューションeSure Power Extend Converterによりこれを達成しています。既存のDC分電盤に取り付けることができ、タワーのベースのスペースを取りません。
これらの施設に追加される機器、特に5Gの応用機能を実現するIT機器には、ストレージ、セキュリティ、環境管理にこれまでとは異なる考え方を採り入れる必要があります。繰り返しになりますが、IT機器は従来の電気通信機器に比べて繊細で壊れやすく、タワー施設では、適切な設置と保全を心がける必要があります。
これには、もっと違う方法で対応することができます。つまり、個別の、小型のキャビネットから、サーバーラックと熱管理システムを装備した大きなエンクロージャーに移行します。選択は、施設の規模、ベースに必要な機器の量、標準的な環境の状態などさまざまな要因によります。
中央局同様、施設にAC電力を導入するのに伴って、複雑な問題が発生することがあります。多くの場合、IT機器により増加するAC負荷に対応するため、AC電源をアップグレードするか、ソフトウェアで管理する必要があります。このソフトウェアはピーク時に整流器の出力を切断して供給元をバッテリーに切替え、施設のAC電源のブレーカーが落ちないようにします。
Vertivは三相電力のバランシングによる革新的なアプローチでブレーカー作動回避の課題に対応しています。電力会社と新しいAC電力供給について交渉するには時間もコストの必要となるため、このようなインテリジェントなエネルギーマネージメントが大変重要です。
世界の5Gの進捗
5Gはグローバルなテクノロジーかもしれませんが、世界の各地に同じペース、同じ形で展開されているわけではありません。中国と韓国が5Gの競争で先行しており、それに引きずられるようにしてアジア太平洋地域の諸国が続いています。
この地域の電気通信事業者は新しいネットワークとネットワーク機器を迅速に展開しており、施設を果敢に新設しながら、その補足として必要な設備更新を実行しています。これらの事業者は高電圧DCアーキテクチャをためらいなく取り入れていますが、データセンターに高電圧DCテクノロジーを採用する事業者がこの地域に多いことを考慮すれば、この動向は当然といえます。
米国の戦略はアジアに比べて少々控えめなものになっています。主に、4G設備を5Gに更新するアプローチが重要になっています。大規模な電気通信事業者は現在と将来のニーズへの対応を目指す一方で、小規模な事業者は資本投資を抑えるためにより小規模な展開を選択しており、プロバイダーによって違いがあります。
ヨーロッパは驚くほど出遅れており、5Gの運用開始への歩みがアジア、米国から1年ほど遅れています。周波数の割り当てが依然として遅れることをはじめとする、継続的な課題がいくつか存在しています。
しかし、注目すべき例外もあります。フランスとフィンランドは早い時期から動き、周波数の割り当てを迅速に済ませました。しかし、多くの場合において、周波数のオークションはまだはじまっていません。2021年の終わりまでに割り当ての70~80%が進むものと予想されています。
ヨーロッパにおける鈍い出足は、取り組み不足によるものと誤解すべきではありません。時代を先取りしている事業者は勢いよく展開を進めており、周波数オークションを待たされている事業者さえも、「その時」が訪れたら即時に移行できるよう、施設の準備に余念がありません。
ヨーロッパの電気通信事業者の多くは、5Gに投資する資金を手に入れるため、基地局のタワーを鉄塔事業者に売り戻しています。そして、タワーを使用できるよう鉄塔事業者から賃借する方式に切り替えています。
このことにより、タワーを使用した時間に対してのみ電気通信事業者に課金できるよう、これらの施設においてインテリジェントなパワーマネージメントが必要となっています。Vertivはこのようなマルチテナント構成に対応する、電力計測とパワーマネージメントのソリューションを提供します。
ヨーロッパには展開できる基地局の数を巡る規制もあります。これにより第5世代ネットワークによる高密度化は別の方法で生じています。タワーの不足を解消するため、小さな、重複するセルを多数展開しています。セルが重複するこの設計により、一部にバックアップ電源がない基地局を展開することができ、そのかわりに、冗長施設に負荷を移します。
ヨーロッパにおける驚くべき課題は、第5世代ネットワークで音声通信に対応することです。この地域の4G網の一部は音声通話に対応する装備がありません。かわりに、より古い2G、3G網に依拠しています。早い段階に示された動向によれば、多くの事業者が3Gを廃止する一方で、より古い2Gを音声送信のために維持することを計画しています。
ヨーロッパ全域に見られる遅い展開によって、電気通信事業者にはネットワークのエネルギー消費、排出量、全体的な環境インパクトに注目する時間的余裕が与えられています。これらの課題は、エネルギーの如何を問わず、大陸全域の優先課題となっています。一方で、この地域の電気通信事業者は5Gの本質的な課題を認識しています。
ヨーロッパの電気通信事業者はすでに長期にわたって混成電源システムを受け入れ、支持してきました。この傾向はこれからも継続し、5Gを支え、ネットワークのカーボンフットプリントの縮小につながるものと見られます。
中東とアフリカにおける投資と進捗は、想定のとおり、より豊かな国と都市部を中心としたものになっています。
5Gの効率とサステナビリティ
5Gは、この時代で最も革新的な通信テクノロジーとなり、拡大しているエネルギーと持続可能性の課題を解決するために不可欠な高度なエネルギー管理機能など、さまざまな新しいサービスを実現します。しかしながら、電気通信事業者は5Gによるエネルギー消費と排出量の増加という現実的な課題にこれからも直面します。 第5世代ネットワークは従来の4Gより最大90%以上効率的ですが、ネットワークの高密度化、ITシステムへの依存度の高まり、ネットワーク使用量の増加、トラフィックの増加の加速化により、さらに多くのエネルギーを必要としています。電気通信事業者はエネルギー効率を向上するベストプラクティスをネットワークの随所に採用してこの課題に対応する必要があります。このベストプラクティスは、エネルギー消費と排出量の増加を抑え、関連するコストを削減するのに役立ちます。 |
5Gに関連するどのようなことにも当てはまるように、これらのベストプラクティスは、以前から存在しているものに比べて根本的に異なる、見慣れないものです。第5世代ネットワークをフルに実装するためには、エッジにより多くの施設が必要であり、以前の3Gや4Gに比べてはるかに高密度な実装になります。5Gの周波数に対応し、5G対応アプリケーションとそのユーザーの帯域幅とレイテンシの需要を満たすためには大規模な変更が必要です。基地局自体が異なり、より多くのエネルギーを消費するIT機器がはるかに多く設置されています。 業界には、(特に、5G対応の初期において)第5世代ネットワークが毎ギガバイトベースで3Gや4Gより効率的になることばかりが注目される傾向があります。これが真実であることは明白ですが、施設の数が莫大に増加する上、ITに頼るこれらの施設のエネルギー需要は高く、結果としてエネルギー消費の急増を招きます。この急増は、相当な影響をもたらします。 世界のモバイルデータトラフィックは2025年までにほぼ4倍に増え、それはネットワークのエネルギー消費の増加を招き、2026年までにネットワークの全体的な消費量は150%~170%増加します。電気通信事業者はこのことを知っています。電気通信事業者の94%は、第5世代ネットワークの登場によりエネルギー消費が増加すると予測しています。しかしながら、5Gの初期段階では、迅速な展開が何よりも優先されています。そのネットワークが拡大し、幅広く受け入れられるようになるのに伴い、電気通信事業者の関心はエネルギーの使用とネットワークの運営コストに移っています。 |
これは、特に真新しいことではありません。結局のところ、ネットワークの運営コストの92%はエネルギー消費に充てられています。5Gは単にこの課題を増幅しているだけです。 電気通信事業者が今すぐ導入すべき簡単なステップから、施設のアーキテクチャの根本的な再考を必要とする、より意欲的なアプローチまで、検討すべき戦略と戦術にはさまざまなものが存在しています。 第5世代ネットワークにおいて適切にネットワーク密度を高めるため、新しい基地局が多数必要です。しかし、世界中に存在している数十万もの施設の多くに5G対応のための改造が施されています。それらのうちほとんどでなくとも多くが、旧式で非効率な機器を装備しており、従来からのDC電力システムを新しい高効率整流器を備えた新しいシステムに交換することで効率を5~6%改善できます。当然、施設を新設する場合には効率を優先し、できる限り効率が高い機器を装備します。 最近のDC電力システムはさらにインテリジェントになっており、最新のエネルギーマネージメント機能が搭載されています。従来の基地局では、静的な動作を優先し、このような機能はまったく無視されていました。電気通信事業者はこのような機能を活用してコストを下げることができます。例えば、電気通信事業者はより安価なオフピークエネルギを蓄え、ピーク時にこのエネルギーを使用し、ピーク時の電力使用量とコストを抑えるように動作モードを選択することができます。 |
バッテリーの技術進歩は、効率改善のためのさらなる機会を与えます。リチウムイオン(Li-ion)電池には、これまでの制御弁式鉛蓄電池(VRLA)バッテリーにはなかったいくつかのメリットをもっています。価格の減少に伴い、投資に十分に見合った見返りが得られるようになりました。 リチウムイオン電池は小型で、高温でも動作させることができるため、VRLAが必要とする程の冷却は不要であり、エネルギー消費量とコストの削減につながります。 リチウムイオン電池の寿命はVRLAより長く、電気通信事業者はバッテリー寿命を延ばすことでモニタリングと交換が必要となる場面を減らし、交換作業のための業者の派遣回数とコストを削減できます。また、これらの業務に伴う二酸化炭素の排出も抑えることができます。 最近のDC電力システムはさらにインテリジェントになっており、最新のエネルギーマネージメント機能が搭載されています。従来の基地局では、静的な動作を優先し、このような機能はまったく無視されていました。電気通信事業者はこのような機能を活用してコストを下げることができます。例えば、電気通信事業者はより安価なオフピークエネルギを蓄え、ピーク時にこのエネルギーを使用し、ピーク時の電力使用量とコストを抑えるように動作モードを選択することができます。 加えて、インテリジェントバッテリー管理システムを備えたリチウムイオン電池は、ピークシェービング、昇圧コンバーターを有効に活用し、電力システムの容量を超える運転を可能とすることで包括的なネットワークエネルギー戦略に貢献します。 これらは、即時の効率改善につながる重要な手段です。考慮すべきこととして、2019年の段階で、電気通信事業者の66%がバッテリー更新を進めており、81%は5年以内に更新すると表明しています。 |
段階的な改善は重要ですが、5Gのエネルギーの課題に対応するには不十分です。5Gが約束するのは、各サイトとマイクロサイトでデータを処理し、コンピューティングを行う機能により、エンドユーザーに超低遅延のアプリケーションを提供することです。これを実現するため、電気通信事業者は広がり続けるネットワーク上にIT機器を幅広く導入する必要があります。これが、4Gと5Gの最も重要な違いです。 不幸にして、それらのIT機器は安全で、空調が効いたデータセンターを想定して設計されており、電気通信アクセスネットワークの過酷な環境には不向きです。これまでに考察したとおり、AC電力で動作するようになっています。 電気通信環境にこれらのAC駆動機器を導入するには、電力変換のステップを加える必要があり、どのような変換にもエネルギーの損失が伴います。つまり、同じ結果を得るには、より多くの電力で始める必要があります。より多くの電力を扱うことは、より多くの熱が発生することを意味します。IT機器は従来からの電気通信機器に比べて熱に弱く、冷却の優先度が高くなります。冷却はエネルギーを消費します。 |
多くの基地局で用いられている40フィート(12 m)の機器収納コンクリートシェルターにこの機器を設置する場合、それはこのシェルターを冷房する必要があることを意味します。たとえITシステムを許容温度範囲の上限で動作させたとしても、このように大きなコンクリートの構造物を冷却するには、大量の冷気と大量のエネルギーが必要になります。 より小型の、最新式の収納エンクロージャーは、繊細な機器をエレメントから保護する設計になっており、また、外気の取り込みから液冷テクノロジーまでのさまざまな種類の冷却方法に対応し、さまざまな局や設置場所の固有のニーズにも対応できるようになっています。 インテリジェントマネージメントシステムは人工知能(AI)とデータ分析を使用し、最適な温度設定を継続して調整し、ポンプ、ファンを制御して可能な限り適切な結果を達成します。 これは、基地局単体で考えれば大した問題ではありませんが、ネットワークの基地局は数十万もの数にのぼることもあります。エネルギー消費のわずかな増加も、すぐに大きく膨れ上がります。逆に考えると、単体でのわずかな改善が大きな効果につながることは幸いなことです。 |
エネルギー消費は、電気通信事業者が今日直面する大きなサステナビリティの課題のほんの一部に過ぎません。世界が気候変動と排出量削減に注力しており、このことはすでに業界の意思決定者に影響を及ぼしています。 VerizonとVodafoneは2040年までに排出量ゼロを目指しています。Telefónicaは、上位4つの市場で、2030年までに実質ゼロを約束しています。それを達成するため、VerizonとVodafoneは2025年までの電力使用量50%削減を目指しています。Telefónicaは2030年までに70%削減を目指します。 これらは大胆な約束であり、これを達成するための戦略に上記のベストプラクティスが盛り込まれるのはほぼ確実です。しかし、これらの戦略だけでは十分とは言えません。 再生可能エネルギー源とハイブリッド電力システムをソリューションの一部に採用しなくてはなりません。アフリカとヨーロッパでは、ハイブリッドシステムはすでに20年前から展開されています。世界のその他の地域は、この動きに続いています。米国では、エネルギーが安く潤沢なままでした。そして太陽電池パネルとソーラー電力のコストが受け入れられないほどに高かったため、電気通信の業界ではハイブリッド技術をまったく無視してきました。 米国の一部でこの状況に変化が見られます。エネルギーのコストは上昇し、供給は乏しくなり、ソーラー技術の進化によりキロワット時あたりのソーラー電力コストは送電網の電力のコストに近づいています。 送電網に接続する展開では、より優れたバッテリーのインフラコストを増やすことなく、ソーラーパネルを追加することで送電網への依存を抑えることができます。補助金など活用できる奨励制度を考慮することで、確実な提案ができます。ハイブリッドシステムの米国市場が成長するのに伴い、投資が続くでしょう。そして、それはイノベーションを刺激し、コストを押し下げます。 |
VERTIVによる5Gへの移行
第5世代ネットワークは通信速度とデータ通信量を劇的に増強し、生活にますます大きな価値をもたらす、無数の、新しい、高度な応用の道を拓きます。このような応用への依存が高まるのに伴い、ネットワークの信頼性とセキュリティがさらに重要になります。
これに伴い、現在の電気通信事業者にかつてなかった課題が突き付けられます。事業者は数十万の既存設備を更新し、いくつもの施設を新設し、ネットワーク上でのITシステムの増殖に伴うエネルギー消費の莫大な増加に対応する必要があります。
電気通信分野への幅広くITを導入することは、これら第5世代ネットワークを保護し電力を供給する上で、中心的な課題です。コア、アクセス、エッジにITを導入することは、従来からDCで駆動してきた環境にAC電源を追加することを意味します。これは、多くの電気通信事業者にとって異質の概念です。1世紀を超えて蓄積されたDC電力のノウハウに比べ、AC電源はかつてなかった要素であり、無視できない複雑さをもたらします。
そこで登場したモデルは、従来からの電気通信技術とデータセンターのアーキテクチャを採り入れたハイブリッドシステムです。Vertivはこの2つの業界の両方のノウハウをもち、このように対立しがちな利害に対応して第5世代ネットワークの高信頼性と効率を確保するインフラのソリューションを世界中の電気通信事業者に展開する取り組みを進めています。